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紙の請求書、スキャナ保存しない方が正解な理由

電帳法のスキャナ保存は任意制度です。要件の厳しさと得られるメリットを天秤にかけると、多くの中小事業者にとっては「やらない判断」が正解になります。

紙書類とタブレット画面が並ぶ抽象イラスト。紙保存と電子化の選択を表現

電帳法のスキャナ保存は 任意制度 です。紙の請求書・領収書をスキャンして原本を破棄するこの制度は、要件が厳しい割にメリットが限定的で、多くの中小事業者にとっては「やらない判断」のほうが合理的になります。

本記事では、スキャナ保存の要件、やる価値がある条件、やらない場合の代替策を整理します。

結論を先に:紙のまま保存が一番楽

紙の請求書・領収書を 紙のまま ファイリングして保管しておけば、電帳法上の要件は一切かかりません。義務は電子取引データの保存だけで、紙書類のスキャナ化は完全に任意です。

「全部電子化しなければ」という思い込みは捨てて構いません。スキャナ保存に踏み切るのは、紙の量が多くて保管スペースに困っている、業務上どうしても電子化したい、といった理由がある場合に限定するのが現実的です。

スキャナ保存の主な要件

スキャナ保存をやるなら、以下のすべてを満たす必要があります。

要件内容
解像度200dpi 以上、24bit カラー
入力期限おおむね 7 営業日以内(規程整備で最長 2 ヶ月+7 営業日に延長可)
真実性確保認定タイムスタンプ付与 または 訂正削除履歴が残るシステムの使用
帳簿との相互関連性仕訳と書類が伝票番号等で紐付くこと
検索機能取引日・金額・取引先(売上 5,000 万円以下なら免除)
見読可能装置ディスプレイ・プリンタの備付け

電子取引データと違って 事務処理規程による代替ルートが認められていない のが最大のポイントです。タイムスタンプか訂正削除履歴システムのどちらかを実装する必要があります。

「規程で代替」が使えない意味

電子取引データの保存では、タイムスタンプを買わなくても事務処理規程の整備で改ざん防止策を満たせました。しかしスキャナ保存ではこの代替ルートがありません。

つまり、Google Drive や Dropbox に PDF を置くだけ、という汎用ストレージでの自前運用が原則できません。何らかの専用ツール・サービスが必要になります。

やる価値がある条件

以下のいずれかに当てはまるなら、スキャナ保存を検討する価値があります。

  • 月に紙の請求書が 数十枚以上 届く
  • 保管スペースの確保が物理的に難しい
  • 紙書類を頻繁に検索する業務がある(建設業の工事台帳など)
  • 既にスキャナ保存対応の SaaS(マネーフォワードクラウド Box・freee ファイルボックス・バクラク等)を使っている

逆に、月に数枚〜十数枚程度なら、紙のままファイリングする方が運用が楽です。

やる場合の現実的な選択肢

スキャナ保存を実装するなら、JIIMA 認証取得済みの SaaS を使うのが定石です。

サービス立ち位置
マネーフォワードクラウド Boxクラウド会計と一体運用、追加費用なしで使える
freee ファイルボックス同上、freee ユーザー向け
バクラク請求書受領特化、自動仕訳機能あり
楽楽精算経費精算統合型

これらは認定タイムスタンプを内蔵し、電帳法のスキャナ保存要件を自動的に満たすよう設計されています。自前で要件を組み立てるより圧倒的に楽です。

認定タイムスタンプを単独契約する選択肢もありますが、月額固定費(個人〜小規模法人だと年間 10 万円超)が割に合わないので、SaaS 利用が現実解になります。

Q&A

Q:スキャンしておいて、紙原本も保存し続けるのはアリ?

可能です。ただしその場合は紙原本が正本となり、スキャン画像は補助的な扱いになります。電帳法上のスキャナ保存要件は適用されないため、自由な運用が可能です。バックアップ目的なら、この方が運用が軽いです。

Q:一般書類(見積書・注文書等)は緩いと聞いたが?

そのとおりです。重要書類(請求書・領収書・契約書等)と違って、一般書類はスキャナ保存の入力期限が緩く、事務手続書類の備付けがあれば「適宜入力」が可能です。重要書類はそのまま紙保存し、一般書類だけスキャナ保存する、という運用も理屈上は成立しますが、運用が複雑になるためおすすめしません。

Q:スキャナ保存をやめた場合、過去に電子化した分は?

過去の運用に基づいて適切に保存していれば問題ありません。新規分から紙保存に戻す、という切り替えは自由にできます。

次のステップ

電帳法の制度全体については 4 問診断 を、対応の最小工数については 小規模事業者向けマニュアル もあわせてご覧ください。

おわりに

AI を使ったバックオフィス業務の効率化に興味がある方は、お問い合わせ または X @backops_jp からお気軽にどうぞ。


本記事は電子帳簿保存法の一般的な情報提供を目的としています。個別具体的な税務判断・会計処理については、必ず税理士・所轄税務署にご確認ください。詳細は 免責事項 をご覧ください。