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新規開業・スタートアップの電子帳簿保存法 スタート設定

開業3年未満の事業者は検索要件が免除されるため、電帳法対応は最小工数で済みます。最初から将来の成長を見越した設計を組むためのスタート設定をまとめました。

開いたノートから芽が伸びる抽象イラスト。新規開業の成長と始まりを表現

新規開業や法人設立から間もない事業者は、電帳法の対応で恵まれた立場にあります。基準期間がないため、売上規模に関わらず検索要件が免除され、最低限の整備だけで電帳法に対応できるからです。

本記事は、診断記事のパターン A に該当する 開業 3 年未満の方 向けに、スタート設定の手順と将来の成長に備えた準備を整理します。

まだ診断していない方は、先に 4 問診断 をご覧ください。

結論を先に:最初は最小工数で OK

開業初年・2 年目(法人なら最初の 2 期)は、基準期間がないため検索要件が自動的に免除されます。やるべきことは 2 つだけです。

  1. 事務処理規程を整備する
  2. 電子取引データを Google Drive 等に保存する

これだけで電帳法上の要件を満たせます。タイムスタンプも索引簿も SaaS も最初は不要です。

基準期間がない場合の特例

電帳法の検索要件は、基準期間(前々年・前々事業年度)の売上高が 5,000 万円超かどうかで判定されます。開業初年や 2 期目の事業者には基準期間そのものが存在しないため、自動的に「5,000 万円以下と同じ扱い」になります。

つまり、開業から 3 年目に入るまでは、売上規模に関係なく検索要件が免除されます。仮に 1 期目で売上 1 億円を達成したスタートアップでも、検索要件は不要です。

スタート設定の 4 ステップ

Step 1:事務処理規程を備え付ける

国税庁の公式サンプルをダウンロードして、社名・代表者名・施行日を記入するだけで完了します。

参考資料(各種規程等のサンプル)|国税庁

詳しくは 事務処理規程テンプレート をご覧ください。

Step 2:電子取引データの保存先を決める

Google Drive・Dropbox 等のクラウドストレージに保存先フォルダを作ります。年・月の階層で十分です。

電子取引データ/
  2026年/
    04月/
    05月/

ファイル名は当面、内容が分かれば自由で構いません。後述するように、最初から命名規則を統一しておくと、将来売上が伸びたときに切り替えコストがゼロになります。

Step 3:紙書類は紙のまま保存

紙で受領した請求書・領収書はファイリングして保管します。スキャナ保存は任意制度なので、最初からやらない判断で問題ありません。

Step 4:会計ソフトの導入を検討

仕訳帳・総勘定元帳の保存は、会計ソフトを使うのが最も楽です。マネーフォワード・freee・弥生などのクラウド会計を最初から導入すれば、帳簿の電帳法対応は自動的にクリアできます。

紙印刷で保存することもできますが、スタートアップ規模なら最初から会計ソフトの方が後の移行コストが少なく済みます。

スタートアップ特有の論点

SaaS 課金の領収書

AWS・Google Workspace・Slack・GitHub・Stripe 等の月額課金は、ほぼすべてが電子取引データに該当します。各サービスのダッシュボードから領収書(PDF・HTML)をダウンロードできるので、月次でまとめて保存先フォルダに集約します。

ID・パスワードがあれば後からでも領収書を再取得できる場合が多いため、まとめて取りに行く運用でも対応できます。

クレジットカード決済の領収書

法人クレジットカードや事業用デビットカードでの決済は、明細データとは別に インボイス本体(PDF・紙) の保存が必要です(消費税を原則課税で申告している場合)。

詳しくは クラウド会計の盲点:インボイスと電帳法 をご覧ください。

海外取引

海外サービスからの請求書は、インボイス制度の対象外です。電帳法の電子取引データとしての保存は必要ですが、適格請求書としての要件は適用されません。免税事業者・簡易課税事業者と同じく、インボイスの 6 項目を満たす必要はありません。

将来の成長に備えた設計

開業から 3 年目以降、基準期間の売上が 5,000 万円を超えると検索要件が必要になります。最初から以下を実践しておくと、その時点での切り替えコストがゼロになります。

推奨する命名規則

20260401_株式会社ABC_110000.pdf

「日付(YYYYMMDD)_取引先_金額.pdf」の形式で統一しておけば、将来検索要件が必要になった時にも、ファイル命名だけで対応できます(中規模事業者向けマニュアル Step 2 の選択肢 A 相当)。

月次運用ルールを決める

毎月末(または月初)に以下を実施するルールを決めておくと、保存漏れがなくなります。

  • メール添付で受領した PDF を保存先フォルダに移動
  • SaaS のダッシュボードから領収書をダウンロード
  • 紙書類をファイリング
  • 会計ソフトに月次で取り込み

ルールが定まっていれば、後で経理担当者に引き継ぐ際もスムーズです。

Q&A

Q:1 期目で売上 5,000 万円を超えたが検索要件は必要?

不要です。基準期間(前々事業年度)の売上で判定されるため、1 期目の売上は判定に影響しません。3 期目以降に必要となるかは、1 期目の売上で決まります。

Q:開業届を出す前の支出はどう扱う?

開業前準備のために支出した費用は、開業費として計上できます。領収書(紙・電子いずれも)は通常通り保存してください。電子取引データに該当するものは、開業以降と同じ運用で保存します。

Q:青色申告の届出は電帳法と関係ある?

直接の関係はありません。青色申告は所得税・法人税の特例制度、電帳法は帳簿書類の保存方法を定める法律で、別の論点です。ただし会計ソフトを使えば両方を同時にクリアできるので、最初から会計ソフトを導入するのがおすすめです。

Q:1 人会社でも事務処理規程は必要?

必要です。法人格があれば 1 人会社でも法人として規程を整備します。国税庁公式サンプルの法人用を使い、代表者名を記入するだけです。

おわりに

AI を使ったバックオフィス業務の効率化に興味がある方は、お問い合わせ または X @backops_jp からお気軽にどうぞ。


本記事は電子帳簿保存法の一般的な情報提供を目的としています。個別具体的な税務判断・会計処理については、必ず税理士・所轄税務署にご確認ください。詳細は 免責事項 をご覧ください。