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売上5,000万円超の事業者向け 電子帳簿保存法 完全対応マニュアル

検索要件が必要になる売上5,000万円超の中規模法人向けに、索引簿・命名規則・SaaS活用といった実装手段を整理しました。コストと運用負荷の最適化を重視した構成です。

整列した複数のフォルダが描かれた抽象イラスト。中規模事業者の体系的な書類管理を表現

電子帳簿保存法(電帳法)の対応で最も負荷がかかるのが、検索要件 3 つを満たす実装です。基準期間の売上高が 5,000 万円を超えると、これらの要件が必要になります。

本記事は、診断記事のパターン C に該当する 売上 5,000 万円超の事業者 向けに、コストと運用負荷を最適化する実装手段をまとめます。

まだ診断していない方は、先に 4 問診断 をご覧ください。

結論を先に:検索要件 + 規程整備で実装

売上 5,000 万円超の事業者がやるべきことは以下の 3 つです。

  1. 事務処理規程を整備する(小規模事業者と共通)
  2. 検索要件 3 つを満たす仕組みを作る(索引簿 + 命名規則、または対応 SaaS の利用)
  3. 電子取引データを電子のまま保存する

既にクラウド会計の証憑保存機能(マネーフォワードクラウド Box、freee ファイルボックス等)を使っているなら、検索要件はソフト側で自動的に満たされます。これらを使わない場合でも、Google Drive 等のクラウドストレージにファイル名の規則を決めて保存するだけで対応できます。

検索要件 3 つの中身

電帳法では電子取引データに対して、以下 3 つの検索機能を求めます。

要件内容
①基本取引年月日・金額・取引先で検索できる
②範囲指定日付・金額の範囲指定で絞り込める
③組合せ2 項目以上を組み合わせて検索できる

ただし、税務調査時にデータの ダウンロード要求に応じる ことを前提にすれば、②範囲指定と③組合せ検索は不要にできます。実質的に必須なのは①の基本検索のみ、と考えて運用設計するのが現実的です。

実装ガイド

Step 1:事務処理規程を整備する

真実性確保(改ざん防止)の要件は、事務処理規程の整備で対応します。これは小規模事業者と共通です。

国税庁公式サンプルをダウンロードして、社名・代表者名・施行日を記入するだけで完了します。詳しくは 事務処理規程テンプレート をご覧ください。

Step 2:検索要件①を実装する

選択肢は大きく 3 つあります。多くの事業者にとっては、選択肢 A の Drive 運用で十分です。

選択肢 A:Google Drive 等 + ファイル命名規則(最も楽)

クラウドストレージにファイルを保存し、ファイル名に取引情報を含めます。命名規則の例:

20260401_株式会社ABC_110000.pdf

これで Drive の検索機能を使えば、取引日・取引先・金額のいずれでもファイルを見つけられます。年・月のフォルダで階層化しておくとさらに見やすくなります。

国税庁も「規則的なファイル命名による検索性確保」を認めています。索引簿のような別管理を作らずに済むので、運用が長続きしやすい方式です。

ファイル命名のミス防止には、月末にまとめて命名し直す(メールで届いた PDF を月末に整理する)といった運用ルールを決めておくと続きます。

選択肢 B:Excel 索引簿で別管理する

ファイル名は連番(0001.pdf 等)にしておき、index.xlsx で取引情報と紐付ける方式です。

| 連番 | 取引年月日 | 取引先 | 金額 | ファイル名 |
| 0001 | 2026-04-01 | 株式会社ABC | 110,000 | 0001.pdf |
| 0002 | 2026-04-15 | XYZ商事 | 55,000 | 0002.pdf |

ファイル名の付け間違いを気にしたくない場合や、取引情報を一覧で俯瞰したい場合に向きます。ただしファイルと索引簿の二重管理になるため、命名規則(選択肢 A)の方が運用は軽いです。

選択肢 C:対応 SaaS を使う

クラウド会計の証憑保存機能や、専用の証憑管理 SaaS を使えば、検索機能が標準で備わっています。取引件数が多い、自動仕訳まで連携させたい、といった場合に向きます。

サービス特徴
マネーフォワードクラウド Boxクラウド会計と一体運用、追加費用なし
freee ファイルボックスfreee ユーザー向け
バクラク請求書受領特化、自動仕訳
楽楽精算経費精算統合型

Step 3:ダウンロード応諾の準備

検索要件②③を免除する条件です。税務調査時に、電子取引データをすぐに渡せる状態にしておきます。

具体的には:

  • 保存先フォルダの場所を把握している
  • USB メモリへのコピー、ZIP 圧縮、メール送付ができる
  • 索引簿(Excel/CSV)も併せて提出できる

これで②範囲指定と③組合せ検索の実装は不要になります。

Step 4:帳簿の保存方法を決める

仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿は、以下のいずれかで保存します。

方法内容電帳法上の扱い
会計ソフトで保存マネーフォワード・freee・弥生等「その他電子帳簿」要件を自動充足
紙印刷で保存月次・年次に印刷して綴じる電帳法の対象外
自作システムで保存Excel 等「その他電子帳簿」要件を自分で確認

会計ソフトを使っているなら追加対応は不要です。

Step 5:紙の請求書の扱いを決める

紙で受け取った書類は、紙のまま保管するのが最も楽です。スキャナ保存制度は任意で、要件が厳しい割にメリットが限定的なため、原則やらない方向がおすすめです。詳しくは 紙の請求書、スキャナ保存しない方が正解な理由 をご覧ください。

SaaS 利用 vs 自前運用の判断

実装方法の選び方は、月の電子取引件数で目安が立ちます。

月の電子取引件数おすすめの実装
〜30 件程度Drive + 命名規則(自前運用、最低コスト)
30〜100 件程度Drive 運用 or 対応 SaaS(好みで選択)
100 件以上対応 SaaS ほぼ必須、自動仕訳機能の活用も検討

件数が多くなると命名作業の手間とミスが増えるため、SaaS の費用対効果が高くなります。逆に件数が少ないなら、月数千円の SaaS 費用をかけずに Drive 運用で十分です。

インボイス対応の盲点に注意

消費税を 原則課税 で申告している事業者は、クラウド会計の連携データだけではインボイスの仕入税額控除要件を満たせない盲点があります。検索要件の実装と並行して、インボイス本体の保存運用も整えてください。

詳しくは クラウド会計の盲点:インボイスと電帳法 をご覧ください。

Q&A

Q:検索要件免除を受ける届出は必要?

ダウンロード応諾による②③免除には届出は不要です。実態として要求に応じられればよいので、運用ルールで対応します。

Q:5,000 万円を 1 期だけ超えた場合は?

判定は基準期間(前々事業年度)の売上です。1 期超過した場合、その期から 2 期後の対応が必要になります。逆に、再び 5,000 万円以下に戻れば、その後は検索要件が再び免除されます。

Q:取引先別フォルダにすれば取引先検索は満たせる?

取引先別フォルダだけでは取引日や金額での検索ができないため、それ単体では不十分です。ただし、ファイル名に取引日・取引先・金額を含めておけば、フォルダ分けの有無に関わらず検索要件①を満たせます(Step 2 の選択肢 A)。フォルダ分けは見やすさのための補助と考えてください。

Q:索引簿は税務署に提出するもの?

提出は不要です。社内で運用し、税務調査時に提示できれば OK です。

おわりに

AI を使ったバックオフィス業務の効率化に興味がある方は、お問い合わせ または X @backops_jp からお気軽にどうぞ。


本記事は電子帳簿保存法の一般的な情報提供を目的としています。個別具体的な税務判断・会計処理については、必ず税理士・所轄税務署にご確認ください。詳細は 免責事項 をご覧ください。